SSブログ

【美術・建築用語】 小型ギャラリー [美術・建築用語集]

環状ギャラリーRundgalerie, circular galleryと小型ギャラリーZwerggalerie, dwarf gallery (小人ギャラリー, 小ギャラリー、あるいは矮小ギャラリーとも訳される)と軒ギャラリーeaves galleryは、しばしば明確な概念規定がなされないまま用いられる傾向にあるが、本論文では以下のように定義して用いる。
「小型ギャラリー」、すなわち主に外壁の彫塑的建築モチーフとして水平帯を形成する小型のギャラリー(通例、小アーケードの背後に通路を備える)は、その形態的特徴を表す用語である。これは装飾的要素として、小型のギャラリーが比較的高所に、かつ明確な機能を持たずに(ないし持たないと想定される)用いられている場合に使用される傾向にある。したがって、「軒ギャラリー」 は軒の近くに配された小型ギャラリーを意味し、小型ギャラリーの一種として位置付けられる。小型ギャラリーという用語は、主として様式史上の分析に使われることが多く、発生論的な見地から議論される傾向が顕著である。(Kahl 1939; Kubach 1982を参照。) 
一方、「環状ギャラリー」という術語は、ギャラリーが視覚的に「環(リンク)」を成すべく建築全体を取り巻く場合に用いられ、主に建築図像学の立場において使用される。(Krautheimer 1942を参照。) この建築要素は、マルティリウム、特にイェルサレムの聖墳墓教会、アナスタシス・ロトンダとその複製建築において顕著に見られ、霊廟建築において「意味を担った建築要素Bedeutungsträger」として用いられる。したがって、環状ギャラリーという語は、本来リンクを成すギャラリーという視覚的イメージを捉えた言葉であるが、建築図像学においては霊廟という意味を担った建築要素として定義される。リチャード・クラウトハイマーRichard Krautheimerの見解によれば、環状ギャラリーとは、マウソーレーウムの環状円柱列encircling colonadeと本質的に同じ意味内容を担った建築要素であると考えられる。Kurautheimer 1969, 13を参照。


nice!(0) 

nice! 0