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日本近代教会建築 (1)   [トラベルスタディ]

日本近代の教会堂

長崎へのトラベルスタディが終了し、東京に戻って参りました。長崎には幕末・明治・大正期の教会堂が数多く残されていますが、その中でも棟梁建築家鉄川与助の代表作など、たいへん素晴らしい建築を見ることができました。天候に恵まれ、沢山の写真を撮って参りましたので、4月中は西洋中世の建築に関する記事・写真と並行して、長崎の近代教会建築をご紹介していきたいと思います。

ロマネスク、ゴシック、ルネサンス様式などを基調とする日本近代の教会は、基本的には歴史主義(過去の建築様式のリヴァイヴァル)の建築と言えますが、西洋における歴史主義建築の多くが、単に過去の様式を模倣したに過ぎない(中には良いものもありますが・・・)のに対し、何か観る者の心に強く訴えかけるものがあります。それは、長い迫害時代が終わり、ようやく禁教令が解かれた直後、かつて潜伏キリシタンであった人々の「自分たちの教会堂を持ちたい。」という宗教的情熱が建築の精神的な核となっているからではないでしょうか。

苦しい生活の中から資金を出し合い、労働奉仕によって信者が煉瓦を一つ一つ積み上げ、ようやく完成した聖堂は、弾圧と殉教の歴史に終止符を打つキリシタン信仰の記念碑であったと言えます。鉄川与助はキリスト教徒ではありませんでしたが、西洋の建築技術と様式を短期間で自家薬籠中のものとした、進取の精神に富む建築家でした。激動の時代を生きた幕末・明治の元潜伏キリシタン、建築家や大工たち、長崎の信者の救済に生涯を捧げた神父たちが教会堂建設にかけた思いが、私たちの心を捉えます。

拙い写真と文ではありますが、その魅力を少しでもお伝えできればと思います。

 


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